議場にエアコンを入れなくても涼しくなった今月3日。「今回はおかしい。静かすぎる」。月例協議会を終え、役場庁舎を後にする議員が、ポツリとつぶやいた。「あと1ヵ月ちょっとで告示だというのに、この静けさは異常だ」。
津南町議会は11月9日、4年の任期を終える。それに伴う町議会改選は10月15日告示、20日投票で行うことが、この春早々に決まっている。当初は同27日投票を決めた町選管だが、天皇の「大嘗祭」が27日にあるため、「あえて変える必要はないが、他の自治体もこの日は避けている」とのことで、1週間繰り上げた。このため町立津南中学校50周年記念式が投票前日となった。
改選定数14。今春の県議選に町議辞職で出馬したため現在欠員1人。これまでに今期限りでの退任を表明しているのは現職では1人。多選議員の多くが「地元に後継者を探してもらっている」や「改選で欠員になることは避けたい」など、日時の流れと並行するように、「進退不明確」の現職が増えている。
「だいたい、現職がはっきりしないのに、新人が声を上げるのはやっぱり難しい。まずは現職が態度をはっきりさせるべきだ」
「新しく出るなら、少なくともお盆前に名乗りをあげ、お盆あいさつの話題になるくらいでないとだめだ。新人は誰が何と言おうと出る、というような強い気持ちが必要だ」
どうも、「タマゴが先か、ニワトリが先か」論争にも聞こえる。4年に一度の議会改選。現職にとってはこの4年間の検証の場。「有権者がこの4年間、議員活動をどう見て、評価するか」、それが改選という選挙の場であり、議員にとって唯一最大の評価される場だ。
その評価の場を5回も経ているベテラン議員。6期2人、5期2人。4期1人と、4期16年以上も町議を続ける議員が全体の約4割という高い比率がいまの津南町議会。加えて40代の1人以外は66歳以上という「超高齢化議会」の現状。その評価は改選時の得票数にも表れている。
4年前の前回(有権者8725人、投票率76・80%)。トップ当選は910票。6百票台2人、最低当選275票、350票以下当選は4人と、トップと下位の得票数に大きな開きが出た特徴的な町議選だった。
現職のひとりは話す。「町議は3期だろう。国会議員や県議は国や県とのつながりが強く、経験と当選回数がモノをいう世界。だが町議は違う。やはり地域代表の性格が強い。全町の町議というが、どうあれ地域の利益代表だし、それが地域を良くし、町全体を良くすることつながる。3期の中で次にバトンタッチする人を育てるのも現職の仕事だ」
『町議3期説』は過去にも言われた「つなん伝説」の一つ。それは『1期は勉強、2期は活動期、3期で目標達成』といわれ、3期以上になると『利害と倦怠』が出てくるという。改選のたびに出る「世代交代・議会刷新」。だが経験を積むほど進退表明は難しい。それは「自分が必要とされているのかどうか、経験を積むほど、判断材料がだんだん少なくなる。奢りではないが、『おまえさん、もう辞めたほうがいいぜ』なんて言ってくれる人が、だんだん周りにいなくなる」という現実があるという。
一方で、地域からは「出るのか、出ないのか、はっきりしてほしい」の声が上がる。現職という立場から、そう軽々には態度表明できない事情もあるが、『なぜ、町議をするのか』の原点を考えることこそ、改選期だ。
今回の改選。この静かさの底流には『現職の進退表明の遅さ』があるのは事実。一方で、新人が出にくい、出られない町議会の議員環境、議会環境があるのも事実だ。
次号では、その議会環境・議員環境を検証する。
写真・4年間の検証の場が改選期。9日から任期最後の定例会が始まる