柏崎刈羽原発の事故時の避難ルートになる国道353号の抜本改良となる新トンネル開削を求める新潟・長野両県の関係8市町村で作る「一般国道353号十二峠新トンネル開削期成同盟会」の会長で元文科副大臣・水落敏栄参院議員は、構想する新トンネルが5`を超え、技術的にも事業費的にも困難性が大きいため、「このまま現道整備が進むと現道が重要視され、新トンネル開削は進まなくなる。(ルートを含め)取り組み内容の見直しが必要」と、これまでの新トンネル開削事業化を掲げる運動を、もっと実現性を重視した取り組み運動への見直しに言及し、関係者の注目を集めている。
この新トンネル開削期成同盟会は新潟側が十日町市(合併前は十日町市、中里村、松之山町)、津南町、湯沢町、柏崎市。長野県側は栄村、野沢温泉村、飯山市の両県8市町村で構成。同盟会は1997年・平成9年に設立し、初代会長は旧建設省局長を務めた真島一男参院議員が務め急逝後、十日町市出身の水落氏が会長に就いている。
現道の十二峠は中里・清津峡入口から谷を縫う形で急カーブが続き、冬期間は一定の24時間降雪量により通行止となり、夏場も時間雨量と24時間雨量で通行止にする措置が今も取られている。平成26年、27年には春先に大規模な雪崩を伴う土砂崩れが発生し、28年8月まで2年間以上に渡り交通規制が続き、地域観光や地域経済に大きな影響を与えている。
このため同盟会は事故を契機に中央要望を強め、毎年数回、県や国交省陳情を繰り返している。だが、現道改良を優先する現在の改良整備の方針のため、新トンネル開削は先送りされているのが実情。こうした『遅々として進まない新トンネル開削運動』を、その中身の見直しに水落会長が初めて言及した。
19日、中里・林家旅館で開いた年度総会で水落会長は開会あいさつの中で「353号は新トンネルの長さ、開削の技術的な問題、費用の問題などでなかなか進まない。(開削構想の)現区間の見直しを考える必要があるのではないか」と提起。さらに「沿線関係者、新潟県、北陸地整(北陸地方整備局)などと話し合い意思疎通をはかり、問題点を洗い出し、理解を深める必要がある」と取り組み内容の見直しの必要性を述べ関心を集めた。
新トンネル開削の必要性について水落会長は「十日町・津南、長野北部地域から関越道につながる重要な道路。将来、柏崎刈羽原発を稼働する場合、条件整備の一つとして353号整備の避難道路とするのは不可欠条件。雪崩や土砂崩れで道路が寸断され、経済的被害を受けている道路だけに早急な整備が求められる」と話す。
水落氏は総会後取材に答え「新トンネルは構想では5千b前後。費用面、技術的でも難しい要素が多く、地層が八箇峠トンネルの時もそうだったが砂利層・砂層の掘削は技術的に難しい面が多い。例えばトンネルを2`と3`に分ける技術ができないかなど検討が必要」として、「このまま現道のスノーシェードや土砂崩落防止の整備が進むと現道が重要視され、新トンネル開削はさらに進まず、必要性が薄くなっていくことが心配される。新トンネル事業化を取り組みやすくする知恵を関係者で研究する必要を強く感じる」と、これまでの開削運動の見直しを話している。
毎年、決算予算報告と形通りの要望書提出で終わる総会に、会長として一歩踏み込んだ取り組みの必要性にあえて言及し、関係者の「本気度」を促した形になった。同総会後、地元鈴木一郎議長の呼びかけで地元商工会6団体(中里・津南・水沢・川西・松代・松之山)連名の要望書を水落会長に手渡し、地元経済界も連携した早期事業化の要請運動を始めている。
写真・運動体制やルート見直しに言及した水落敏榮会長