厚生連の経営トップ・菊池正緒理事長は「経営判断」という言葉を何度も使った。厚生連・中条第2病院の病棟廃止の方針を打ち出し、住民代表の地元自治体議会に18日、初めて説明した菊池理事長。「経営の健全化を前提に病院運営を考える必要があり、経営判断が必要」、「厚生連は中山間地での病院運営が多く、私どもはできる限りの医療提供をしている。今回はこの中での経営判断」、「35億円の累積赤字を重く受けとめている。一定の経営判断が必要だ」。説明会では、中条第2病院の来年3月末での病床廃止、隣接の老健きたはらの同廃止を示し、議員多数からの「存続が必要」には、この『経営判断』を楯に終始した。十日町市と津南町の両議会が、厚生連の公式説明を受け、どう対応し、どう行動するか、存続署名した4万1千人は大きな関心を持って見ている。
菊池理事長、渡辺常務、中条第2病院・船山事務長は18日午前9時から、津南町役場4階議場で議員14人に方針説明。非公開で行い3人が質問した。同11時から十日町市議会議場で説明し、同様に非公開のなか7人の市議が質問したという。
津南町議会への説明会後、囲み取材に応じた菊池理事長。「理事会承認を得ている」と明言した。
――中条第2病院の病棟廃止は、再考の余地はあるのか。
「ここまで来ると、なかなか難しいと思っている。(新病院を)建築するかどうかも含めて。患者さんの転院についての話しをこれからしていかなければならない状況で、そこを行きつ、戻りつというのは難しい」
――きょうの説明は決定事項なのか。
「決定事項というよりも、こういうことでやっていきたいということを、説明させてもらった」
――それは病棟廃止は動かないということか。
「いまのところ、そのまま行かせてほしいということ」
――病棟廃止が来年3月末というのは期間的にも厳しいのではないか。
「スケジュール的には敷いてあるが、そこに向けて努力していきたいということ。すでに理事会を開いて承認を受けているので、こういう方針でいきますということ」
――理事会での決定を今日説明したのか。
「決定した事というよりも、この方針でいきますということを、理事会で承認をうけ、経営管理員会の了解を受けているということ」
――4万を超える署名をどう受けとめるのか。
「重く受けとめている」
同日午後、厚生連はマスコミ各社に『中条第2病院等の機能見直しのお知らせ』とするA41枚をFAXしてきた。見直し理由を3点あげている。
『予想以上の人口減少や受診抑制により収益確保が困難』、『医療スタッフの高齢化と退職者補充困難により安定的な医療提供体制確保が困難』、『築50年を超える建物の急激な老朽化により現有施設継続使用が限界』として、中条第2病院は「無床診療所化に患者調整の開始」と、当初示した来年3月末での病棟廃止の表現はない。ただ、老健きたはら・居宅介護支援事業所きたはらは来年3月末で事業廃止と明記。
両議会での説明を受けた議員からは、厚生連の理念や入院者への対応、さらに見直し撤回など、存続を前提にした質問が相次ぎ、見直し方針への賛同意見は一つもなかったという。
一方、昨年末の病棟廃止方針を受け、今年1月から存続署名を始め、十日町市長、津南町長、さらに県知事に署名簿を提出し、両市町議会、魚沼市議会、湯沢町議会に存続請願提出、さらに厚生連・今井経営管理委員会長にも存続要望を提出し、5万人署名をめざす「地域医療を守る住民の会」・大嶋育未代表世話人は「新潟県精神障がい者家族会連合会での存続要望でもありましたが、入院されている方は、転院すると悪化する場合が多く、このまま病棟廃止、転院となれば本人と共に家族は大変な苦しみと負担を背負うことになる。まして魚沼圏域の精神科病棟は減少しており、いまの入院者すべて受入れは困難と聞く。全く現実的ではなく、実施された場合、家族への影響は計り知れずに大きい。考え直してほしい」と厚生連の見直し方針を強く批判している。 恩田昌美