
地域医療の在り方が、大きく問われている。戦前昭和13年から地域住民の命を支えてきた『上村病院』が来月末で入院病棟を廃止し、一般の診療所になることが決まった。一方、町立津南病院は運営赤字の解消のため病床削減、院外薬局など改革を実施。さらに地域唯一の精神科入院病棟を持つ厚生連・中条第2病院は、国の特別交付税の交付変更で補助金が激減し、予定の全面改築を延伸し、歯科廃止、さらに系列の老健施設移管などの方針を出す。国道117号がつなぐ3つの医療機関は、その経営形態こそ違うが地域住民の命を守る拠点。「医師不足、看護師不足、医療スタッフ不足」と共通課題に直面するなか、「地域医療を総合的に考え、しっかり役割分担する抜本的な医療体制を作る必要がある」と、医療現場から声が上がっている。
一般財団法人・上村病院は先月31日、『上村病院だより・医院長あいさつ』で「一般財団は解散し病院の運営は終業となります。4月1日からは従来通りの診療科、健康管理センターを診療所として『社会福祉法人清津福祉会・上村診療所』を開設し、送迎バス運行は引き続き行います」と、3月末で病院の入院業務を廃止し、4月から従来の診療9科で外来を受け、常勤医師もそのままで、現在7ルート運行する送迎バスも継続運行する方針を示した。
上村病院は一般病床45床で現在20人余が入院。多くが隣接の特養施設からの入院で、3月末で退院となるが同施設への移転などが多く、他の一般病院への転院者はほぼいないという。
病院運営の財団解散で「病院」から「診療所」になるため24時間医師常駐がなくなり、救急指定病院からも外れる。ただ一方で、診療所運営により『午後診療』が可能となり、さらに「地域事情にあった診療体制を研究し、地域の皆さんがさらに利用しやすい診療所にしていく」(松本事務長)と方針を示す。休院が続く国保倉俣診療所の週1回診療など4月からの診療所移行で可能になる。運営の十日町市が今後、倉俣診療所再開を視野に上村診療所との連携が期待される。
財団廃止、入院業務廃止の背景は医師を含む医療スタッフ不足、さらに利用者の減少。入院稼働率50%前後で3年間毎年約1億円赤字を出すなど病院運営に困窮している実態がある。80年間、地域住民の命を守ってきた上村病院の財団は解散する。財団理事長で上村斉院長は「一つの時代が終わりましたが、これからも我々は地域のために頑張っていきます。すべてこれまでと同様というわけにはいきませんが、地域の人たちの暮し、医療と福祉、介護と子育てに役立つよう精一杯、努力していきます」とコメントを発表している。なお入院廃止で空く2階病棟は、「今後の医療環境や国の制度改正など、地域環境や医療環境の推移を見定めて研究し、活用策を探り、地域のために有効活用したい」とする。
今回の拠点病院・上村病院の診療所化は、地域医療の在り方に大きな一石を投じている。80年間、民間経営で地域医療の一翼を担ってきた病院の入院業務の廃止は、同じく地域医療を担う町立津南病院、さらに厚生連・中条第2病院にも影響する。同時に、中核病院の県立十日町病院が担う地域医療と周辺医療機関との連携が問われる。
町立津南病院は病床削減と共に老健入所者が入れる包括ベットや居住型ベットを設ける方針。だが医療スタッフや介護スタッフ不足が深刻な状態にある。一方、中条第2病院は一般外来のほか地域唯一の精神科入院病棟を持つ。同様に医療スタッフ不足は深刻。国道117号がつなぐ3つの医療機関は、同様な課題・問題を抱えている。
その中心にあるのが県立十日町病院。全面改築が進み2年後にはすべて新しくなる。看護師養成の専門学校が併設されることも決まっている。医療関係者は話す。「地域医療の課題は、ほぼ共通している。別々の病院で同じ課題に直面しているわけで、この地域全体を総合的に考えた医療体制を考える必要がある」。さらに「これは以前から言われてきていることだが、なかなか協議が進まない。国道117号がつなぐ3つの医療機関が窮地に立ついまこそ、総合的な医療の役割分担、医療スタッフの体制、利用者の送迎運行など作り上げる必要がある。その要は、やはり地元行政だろう。研究するテーブルが早急に必要だ」と話す。
地域住民の命を守る医療機関が窮地に立つ。自治体の連携は、医療機関の連携にもつながる。命を守る関係者が一堂に集い、語り、策を見出す「命の守るテーブル」が早急に求められている。