任期満了(11月9日)に伴う津南町議選は20日告示、25日投票・開票で行い、29歳の現職、桑原悠氏が「910票」を獲得し連続トップ当選を果たした。有効投票の13・7%を占め、前回(15・4%)の得票率に迫る高得票だ。さらに2位当選の中山弘氏693票、3位当選の恩田稔氏664票の上位3人の得票2267票は、全体の34・1%を占め、他の候補は3百台が多く、当落のボーダーラインは260票まで下がった。
開票作業は25日午後7時から町役場大会議室で行い、中間報告なしの「一発発表」で実施。前回を上回る1時間20分余で確定票が出るなど、スピード開票となった。当日有権者数8725人(男4195、女4530)。投票率76・80%(男77・47%、女76・18%)、無効61票。なお4年前の前回投票率は81・67%で約5%、低くなっている。
前回、町議選史上最多の1144票を獲得した桑原悠氏(29、貝坂)。4年間の議員活動がどう評価されるか、今回の町議選の注目の一つだった。結果は『910票』。連続トップ当選を果たした。5%余の投票率低下を考えると、今回も1000票超えの得票ともいえる。今回の獲得を桑原氏は冷静に捉えている。「もっと上を狙っていた。1千票超えを。上村町政に対抗できる良きライバルとして、競い合える力を持つには、票の上積みが必要だと感じていた」。この4年間の議会活動への反省が、今回の得票目標を高めた。そこには「この4年間、町民の方々は議会は何をしているのかと見ていたでしょう。その思いに応えるには、上村町政に対抗できる勢力が必要。そのためには多くの町民の皆さんの支持が必要と考えました」とトップ当選に浮かれる気持ちはない。
開票が始まった午後7時過ぎから、開票待ち会場の貝坂公民館には地元など関係者など40人余が参集。午後8時20分過ぎ、「桑原悠氏910票」の連絡が入ると、会場に拍手が響いた。その後、各候補の得票が次々にボードに書かれ、最後の「中山弘氏693票」が出ると会場にどよめきが起った。一緒に街宣に回った仲間たちと会場の地元支持者50人余と万歳を行い、連続トップ当選を祝った。
会場には今年2月誕生の長女・環ちゃんも、夫・隆宏さんに抱かれて登場。選挙期間中、街宣で疲れて帰る悠氏を元気づけた愛娘。「妻となり、母となり、ものをはっきり言えるようになりました。この子が大人になる時、この津南町はどうなっているのか、そこを常に考えるようになりました」。それは、この町の将来にも通じ、議員活動、さらに議会活動の原点ともいえる。
町議選・解説
「この半分は、議会への批判票だ」。告示2日前に出馬を決意した中山弘氏の当選後の言葉が、今回の津南町議選を物語っている。無投票が濃厚だった今回の町議選。多くの有権者は「無投票は避けたい」、「無投票では町の活力がなくなる」と、一番身近な町議選の『投票なし』を懸念し、「誰か出てくれるだろう」と見守っていた。その最中、17日に開いた「津南町公開討論会」(妻有新聞社主催)から、潮目が変わった。最後の最後に出馬を決めた中山氏。「あの公開討論会で腹をくくった」。
公開討論会で出たのが「上村町政に問題はない」とする『町長与党派』議員からの言葉。「住民代表の議員とは」この疑問符が住民の中に膨らんだのは事実だ。その見えない住民の思いに押されるように中山氏が出馬し、16年ぶり、町議選史上2番目の無投票が回避された。
今回の町議選は、何が問われたのか。連続トップ当選した桑原悠氏の言葉に、それが垣間見える。「上村町政に対抗できる、良い意味でのライバルとして競い合える力を持つには、票の上積みが必要」。これは何を意味しているのか。
議会・議員の責務は行政のチェック機能。その基本姿勢は『是々非々』。この4年間、町行政に対して津南町議会はどうだったのか、という自問を行い、今回の選挙で住民は議会のあり方を考え、1票を投じた。その結果が25日に出た形だ。
それは得票状況に現れている。連続トップ当選の桑原悠氏910表は、有効投票の13・7%になる。上位3人の得票総数2267票は、有効投票の実に34・14%になる。つまり3人で全体の3分の1以上を得票している。
その3人に共通するのは、住民に議員活動が見えたということ。桑原悠氏はこの4年間、特に山間地を歩いた。その先々で住民と懇談した。その成果は具体的な形にはなっていないが、「生活者感覚を忘れない議員活動」の原点ともいえる。中山氏は議員になる前からの活動を継続し、「議員でも一般の住民でも同じ、やればできる、これだ」と独自スタイルだ。
一方、恩田稔氏は閉校した三箇小学校の活用に奔走。鎌倉、横須賀、横浜などの小学校から大学までの交流で、年間350人を上回る交流滞在を実現。いわば津南町の一歩先を行く行動で地域づくりを実践している。
住民はよく見ている。今回の町議選では、前回以上に「真水現象」が出た。上位3人が浮動票的な有権者層をすくい取ったため、他候補の得票は「真水」がそのまま出た。新議会が来月10日スタートする。それは代表を送り出した住民の議会監視のスタートでもある。
(恩田昌美)