
『清津川に頼らない魚野川の水資源確保を検証する』。5年前の2010年11月10日。新潟県庁で泉田知事の仲介により「清津川の分水問題」に関わる十日町市・関口市長、南魚沼市・井口市長は『三者合意』した。その「清津川に頼らない」、清津川の自然流況の状態が、いま実現している。これは、先月10日発生の東京電力・湯沢発電所の屋根崩落事故により、同発電所がストップ、上流の清津川発電所の発電は続いているが、三俣取水口での分水が行われず、上流から流れる全量が、自然流況の状態で清津川に流れている。だが、この状態に待ったをかけたのが東京電力だ。今月6日、湯沢発電所の下流で発電する石打発電所の流水占用(取水口変更)申請を国に申請。これにより、清津川の水は、ストップしている湯沢発電所を迂回し、石打発電所で取水されることになり、国の認可が出た場合、「清津川に頼らない魚野川の水資源確保の検証」が難しくなる。「自然流況により、魚野川にどんな影響が出るか検証する絶好の好機」(関口市長)の実現ができなくなる。三者合意から5年。検証の好機と見られた今年だが、東京電力の「新たな一手」で、分水問題は、変更申請に伴い国は県知事に意見照会し、知事は地元十日町市に意見照会したが、十日町市がどう回答し、その回答を知事がどう受けとめ、国に回答するかが最大の焦点になっている。
県知事からの意見照会は今月10日付文書で、十日町市と南魚沼市の両市に届いている。
十日町市の関口市長は、知事からの意見照会に対し、「十日町市として意見する」と回答準備を始めている。取材に対し関口市長は、東京電力の取水口変更申請に対し、「市民として簡単に納得できる話ではない。県には魚野川の自然流況での調査をしっかりやってほしいと伝えたい。東京電力には、湯沢発電所が復旧するまでは、魚野川からの取水だけで石打発電所の発電を行いなさい、と伝えたい」と、東京電力の『新たな一手』に不快感を示す。三者合意を仲介した県知事には『清津川に頼らない魚野川の検証』の実施を強く求める意向だ。
今回の取水口変変更申請は、屋根崩落で発電ストップしている湯沢発電所の下流にある石打発電所を本格稼動するため、湯沢発電所を迂回する取水口の変更を求めている。変更箇所はすべて既存の導水管のため施設の新設を必要としない。申請期間は『湯沢発電所が復旧するまでの暫定措置』とする。湯沢発電所の被害状況の詳細は明らかではないが、水車発電機4基は崩落ガレキの下で損傷程度が不明。東京電力では「数年かかる見込み」とする。
一方、東京電力は今回の変更申請に合わせ、分水問題の要所である『三俣取水口』を、湯沢発電所復旧まで閉鎖する措置を取る。東京電力は今回の変更申請について「石打発電所は設備に被害はなく、魚野川からの取水だけでは最大出力が出せず、発電を最大限に確保するために23条申請(河川法)をした」とする。
一方、観光名所の清津峡住民や下流域で作る『ふるさと清津川を守る会』の藤ノ木信子事務局長は「東京電力の管理怠慢で起こした事故で、それにより清津川と魚野川のあり方を根本から考える好機となったにも関わらず、それをできなくした東京電力には大きな怒りを感じる」と、今回の東京電力の取水口変更申請に不信感を募らせる。関口市長が泉田知事に対し、どんな意見書を送るか関心が高まる。回答期限はないが、来月末までには回答するものと見られ、これを受け泉田知事が国にどう回答するか、大いに注目される。 (恩田昌美)
写真・2010年の三者合意で方向性が出たが、東京電力の姿勢に大きな疑問が出ている