
『特別委員会を12回、出雲崎町議会へも視察、町民アンケートも実施。定数削減のメリット、デメリットがあり、委員の意見が拮抗した。よって併記報告とする』。津南町議会7月定例会の最終日の先月24日、議員定数特別委員会の大平謙一委員長は、苦渋の選択を報告した。その30分ほど前、本会議場の議員は、2つの議題で賛否を問われた。『津南町地酒で乾杯を推進する条例』、『集団自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定の撤回を求める意見書提出に関する請願』。2件とも賛否が拮抗した。地酒条例は「6対9」で否決、集団的自衛権の意見書提出は「7対8」の最少差で否決。「結論を導き出せない特別委員会」、「二分する意見」。そこには思惑と利害が複雑に交錯する姿が透けて見える。いま、津南町議会で何が起こっているのか。
「議会としての一体感というのか、そういうものが希薄で、それぞれの議員が、それぞれの立場でいいじゃないか、という雰囲気を強く感じる」。3年前、初当選した議員のひとりは話す。
『地酒条例』でも感じた。提案者は地元酒蔵の取締役の議員。今春4月の月例全議員協議会で、条例化を初めて全議員に説明。町長選がなければ「県内初の条例化」が見えていた。だが6月定例会は町長選後、7月22日開催。この間、長岡市が県内初の「乾杯条例」を制定。県内初の話題性は持っていかれた。
議案審議は冒頭から疑問視する意見が相次いだ。「住民が本当に必要と思っているのか」、「(飲酒など)嗜好は個人の自由ではないのか。乾杯を謳う条例は町民の理解を得られない」、「条例というものが持つ意味は重いものだ」。賛同意見はなく、採決では「賛成6、反対9」で否決。賛成議員は桑原悠、恩田稔、津端眞一、根津勝幸、吉野徹、伊林康男の5氏だった。
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なんとも言えない不安定な空気が漂うなか、次の議案審議が始まった。『集団的自衛権の閣議決定の撤回を求める意見書提出の請願』。請願者は全国組織につながる『つなん九条の会』(代表世話人・関谷今朝次氏ら4人)。世話人に名を連ねるメンバーは、戦争体験記「女たちの戦争」を発刊したメンバーの女性、政党関係者などだ。
先月14日提出の同請願は、開会初日の22日、総文福祉常任委員会(草津進委員長・7人)に付託、24日まで審査・協議した。その報告を議会最終日24日に行った。草津委員長は「意見が真っ二つに分かれ、投票結果は3対3。継続審議も考えたが、委員長採決で『不採択』とした」と報告。
これを受けた質疑で、いま津南町議会が抱える体質的が側面が見えた。請願反対の議員は、言ってのけた。「九条の会は護憲派として、社民、共産が背後にある。…日本国憲法はアメリカ製の憲法。国民自ら定めたものではない。使い勝手のよい解釈で使ってもいいのではないか。解釈変更で極端に戦争をする国になるものではない」。政権与党に籍を置く議員は、県・国との関係性を重視するため、「政権与党に不都合なことはしない」と、野党政党が関係する議案にはデリケートに反応する。
この意見書提出は、新潟県内では新潟市・新発田市、五泉市、加茂市、阿賀野市、魚沼市、聖籠町、湯沢町の8市町が可決、意見書提出している。
一方で中間的な正論も出る。「外交は国会で話し合うべきと思う。地方議会は保守派多数が現実。手続き重視の民主主義の中で、急ぎすぎているように思う」。「同類を殺しあうのは人間だけ。70年間で日本人は戦争のせつなさを忘れてしまったのではないか。武力で平和ができたということは聞いたことがない」。
採決では「賛成7、反対8」の1人差で否決。安倍首相への意見書提出に賛成したのは桑原悠、風巻光明、繻エ洋子、中山弘、滝沢茂光、藤ノ木浩子、大平謙一の7氏。
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議会最終日24日に審議した3件に対する議員の姿勢に、議会の現場でしか伝わらない何かがあった。
特別委員会まで設置して取り組んだ議員定数問題。だが、中途半端な結論と決定力不足は、住民代表の議員資質の問題にも通じる。「アンケートは参考資料」としたが、結局、アンケート結果がすべてだった。12回の委員会を経た結論が「両論併記」では、住民代表の議員は不要だ。結論を出し、責任をすべて背負って本会議に報告することが特別委の責務。議会結論は本会議の場だろう。
『地酒条例』を否決した議会。いや議員たち。これが地元酒蔵2蔵の条例制定請願だったら、どう判断しただろうか。「個人の嗜好」というが、条文は『酒類に対する個人の嗜好および飲酒に対する個人の意見は尊重する』と明記している。
なぜ否決か。「条例を誰が提案したか、それが問題」という声を聞く。
これは、『集団的自衛権の閣議決定の撤回を求める意見書提出』請願にも現れている。政党を色濃く感じる代表世話人、さらにその紹介議員。「同じものを戦争体験記をまとめた団体など女性グループが提出したら、どうだったか」。同じような声が聞こえる。
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住民代表の議員で構成する議会。津南町議会は1年後、改選期を向かえる。「議員のあり方」「議会のあり方」、さらに「事の本質。いま何が大切なのか、それをしっかり見る目」、この本質論議こそ、いま、津南町議会に求められている。
(恩田昌美)