長靴に作業着、手にはスコップの出で立ちで先週15日、初めて地区の「道普請」に参加した地域おこし協力隊の西潟いずみさん(26)。十日町市清津峡地区を担当。「みちぶしん?、初めて聞く言葉でしたが、共同作業なんですね」。雄大な柱状節理と清流・清津川の清津峡。河畔沿いの遊歩道や水路などの整備を、地域の人たち総出で行った。
道中、作業しながら聞いた話にすっかり引き付けられた。「皆さんの雰囲気がいいですね。この地域を大切にしている気持ちが伝わってきます」。
北海道・室蘭市生まれ。父の祖父は三条市生まれで、若い時に北海道に渡ったという新潟との縁がある。人口9万2千人。室蘭は高校卒業まで。東海大時代はスノーボードに取り組み、新潟や長野に通った。卒業後の夏、南魚・八海山麓の友だちの家で、八色スイカ収穫を手伝った。その時、自分の中で何かが響いた。
「いいなぁと思いました。こういう所で暮らしたい、と。自分が求めていたもの、そんな感じでした」。
暮らすには仕事が必要と、東京原宿ネスパスに通い、『地域おこし協力隊』の存在を知る。昨年12月、十日町市が受け入れる協力隊を訪ねる日帰りツアーに参加。「こういう仕事もあるんだ」。どんどん自分の気持ちが動いていくのを感じた。1月末締切にすぐに応募。希望通り清津峡地区に決まった。中里地区の先輩の協力隊、小針伸広さん、仲井梨恵さんとのチームワークで地域を盛り上げている。
「前任の大場さんのおかげで、スムースに地域に入っていけます」。大庭さんは3年の任期満了後も同地に暮らし、良き相談相手になっている。
気になるのは「集落の高齢化」。だが地域の人たちは元気だ。「お茶飲んでいかっしゃいと、声を掛けていただきます。いろいろな手料理が出てきて、それがとっても美味しいんです」。
いま十二峠は通行止。不便を強いられる土倉、倉下には定期的に保健師と一緒に巡回訪問。「地域の皆さんの声を、行政などに伝える役割を担えられたらと思っています」。
季節の移ろいを感じる。「先日までは鏡のように景色が映り込んでいた田んぼも、早苗がぐんと伸び、緑の濃さを増しています」。地元の人との共同作業は、レクチャーの場。「この田は雪どけ水しか入らないから、本当にうまい米ができるんだよ、などと話され、その表情がまたいいんですよ」。
来年は第6回大地の芸術祭。地域の人たちと「何かできないかな」と話を始めている。元小学校の清津峡校舎、物産販売所のラピーヌなどの活用を考える。「地元の食材で地元のおかあさんたちと一緒に、農家レストランができないかな、などと考えています」。地域に調理師免許を持つ方が多くいるという。
そのチャレンジに備え、初の野菜づくりに挑戦。畑を借りジャガイモ、キュウリ、ナス、ミニトマトの定番のほか、ズッキーニ、パプリカ、シソ葉、唐辛子なども作付け。
音楽にも取り組む。ピアノ、ギターを奏で、協力隊バンドにも参加。清津峡校舎を活用するアイデアもある。「運動教室や子どもたちの遊びの場、音楽を楽しむ場など、地域の方々が気軽に寄れる場など、いろいろ使いたいですね」。お茶飲み話しで、いろいろアイデアが出ている。 (恩田昌美)