小学校の統合問題が、津南町が統合を進める小学校3校区の共通課題になってきている。町教育委員会は5年前の「津南町立小中学校適正規模検討委員会答申書」に沿い、統合年度を明記した外丸小、中津小の津南小への統合に取り組んでいる。だが両校区には5年前に立ち上がった「小学校を考える会」があり、小規模校の現状や特色ある小学校作りなどを独自に模索し、地域の将来像作りと共に統合問題に取り組んでいる。一方で、同計画に統合年度の明記はないが、「検討する」とある芦ヶ崎小の校区は昨年4月、同様な「考える会」が立ち上がり、統合問題への取り組みを始めている。この3校区の代表者が先月29日、揃って町教委・桑原教育長と懇談した。3校区の共通課題になる主学校統合問題、5年前の答申の再検討を求める声もある。町教委は「校区の各集落で結論を出してほしい」と方針を伝えているが、地域からは「なぜもっと時間をかけ、地域が熟すのを待たないのか」や「特認校などの具体案を出しているが、なぜしっかり検討しないのか」など町教委の姿勢を疑問視する声もある。来週19日夜、町教委は中津小校区で説明会を開く。同小PTAと保育園保護者会は「平成27年度の統合を進めてほしい」と要望書を出しているなか、この説明会で中津小校区民からどんな意見が出るか、注目される。
芦ヶ崎小(児童51人)校区に誕生した「芦ヶ崎小学校の将来を考える会」は、同地区の全体組織・上段地域連絡協議会の主な役員に民生委員、小学校PTA、保育園保護者会、次期総代など19人で組織。同会は「学校統合という課題に対し、単に賛成反対という立場に立つのではなく、現状の実態をよく理解して、学校と地域のあり方、この地域の歴史、今後の地域のあるべき姿などを広く考えてもらう場にしたい」が設置の目的。校区全体が共通理解を持つために『広報 津張(つばり)』(古文書にある上段台地の古称)を発行。先月末付の第2号では、小学校と保育園の保護者46人対象に実施した統合や複式学級についてのアンケート結果を掲載している。
同結果では、「児童の教育面を考えると学校都合はやむを得ない」が21人、「できることなら地域に学校を遺しておきたい」19人と拮抗している。ただ統合推進の意見には「早期の都合は望まない」との慎重論もあり、一方で「統合のメリット、デメリットを保護者や地域に示す機会を作ってほしい」など考える場を求めている。
同小の同窓会長で同会代表の涌井九八郎さん(63)は「今年芦ヶ崎小は創立140周年を迎えている。子どもの居る家が少なくなり、子の居ない家は学校への関心が薄く、統合問題は賛成反対ではなく、地域の将来を一緒に考える場にしたい。学校や地域の歴史を知る機会にもなり、将来の上段地区を皆で考える場にしたい」と話す。外丸、中津の両校区とは、情報交換で連携していきたいとしている。
一方、5年前から統合問題に取り組む外丸小(児童32人)校区。「外丸小学校を考える会」や同校後援会などで取り組むが今年2月、小学校・保育園の両保護者会は「平成27年度の統合を望む」と総意をまとめている。だが考える会は4年前に「存続要望」を町教委に提出しており、校区の総意は棚上げ状態。考える会は、通学校区がない『特認校』として外丸小を残すように要望。地域の保護者や住民で特認校の先進地、南魚沼市・後山小(児童16人)を視察し、平澤健一校長などから現状を聞いている。
考える会の滝沢秀行会長(63)は「町教委に何度も特認校を見て来てほしいと言っているが見ていない。児童数の減少で不安をあおり、親たちもその不安を増幅している。すぐ近くに特認校があり、少ない児童数ながら特色ある教育に取り組み、子どもたちが楽しく笑顔で学校生活を送り、学力も上がっている良き実例がある。まず現場を見て、考えてほしい」と話す。外丸校区では、町教委から7月中に各集落の総意をまとめてほしいと求められており、こうした町教委の要請にも疑義の声がある。
中津小(児童42人)校区は小学校・保育園の両保護者の代表連名で昨年12月、「平成27年度の統合を求める」要望書を町教委に提出している。同地区も3年前に「存続要望書」を上村町長に提出しており、、地域内の総意は同様にまだ出ていない。町教委は来週19日夜、説明会を中津小体育館で開く。同席で町教委側は8月末までに各集落の総意を出してほしいと、地域の総意を求める方針だ。
中津小校区にも外丸小校区と同様に「考える会」に通じる『中津んしょ』組織がある。同グループは統合問題だけでなく、地域づくりグループであり、先日の小学校運動会では独自企画で地域交流の場を作った。代表の鈴木淳博さん(54)は話す。「もっと時間をかけてもいいのでは。地域の将来を皆で考えているなか、統合問題だけが先行し、賛成反対の論議になっているが、小学校を含む地域の将来、どうしたら元気が出る地域になるかを皆で考えている。学校統合だけの問題ではない」と、時間を求めている。
小学校の統合再編を明記した答申書が出て5年が経過する。児童数の減少という避けられない現実があるが、一方で小学校・小学生を取り巻く環境も大きく変化している。5年が経過する「答申書」そのものを再検討する必要はないのか。小学校3校区で出ている住民の動きが、それを物語っている。
加えて、上郷小(児童数43人)も同様な問題に直面するのは、時間の問題だ。3校区の連携に、上郷小の校区民も関心を寄せている。小学校区だけの問題として扱おうとする町・町教委。一方で、校区民は「これは町全体の問題」と考えている。その意味で『各集落に結論を求めるのは、余りにも拙速。もっと時間をかけ、地域が元気になる取り組みを行うべきだ』との校区民の声に、上村町政は応えるべきだろう。 (恩田昌美)
写真・校区移民総出で開いた運動会(2日)、統合問題では意見が分かれている