中越地震、中越沖地震、豪雪、豪雨災害、東日本大震災ー。平成17年に「津南高原開発」が経営を受けてから自然災害が相次いで起こり、いわゆる「風評被害」に襲われた津南町が所有するニュー・グリーンピア津南(NGP津南)。民間委託10年間の契約満了まで2年と迫るなか、町は『契約更新の方針』を示すが年々、施設や設備の修繕費がかさみ、経営を圧迫する状態だ。町は支援策として「賃借料の軽減」を打ち出し、新年度からは従前の10分の1、年間3百万円の賃借料に契約変更し、新年度予算に計上している。「誰もが認める」津南町の観光拠点・NGP津南。建設後27年が経過する観光拠点、その再生策を探る。
津南雪まつりが終了後の4日から6日まで、千葉・木更津高専の一行2百人がスキー修学旅行に訪れ、絶好の快晴のなか、貸切状態の平日のゲレンデに歓声が響いた。
「スキーシーズンのウィークデー対策としてスキー修学旅行の誘致に力を入れ、年々、その成果が出ています」。支配人の樋口明副社長は、トレードマークのグリーンの活動ウェアで忙しく動き回る。今シーズンはここ数年、集中的に営業展開する九州地域の高校を含め、県内や関東圏から4月までに22校、1万3百人が宿泊。4、5月は大学や高校、専門学校の新入生オリエンテーリングなどが入る。
一方で抜群の自然環境をアピールポイントに、東京都内や近郊市と保養所契約を結び、大きな誘客要素になっている。津南高原開発が経営を始めて平成17年の翌年、東京・練馬区と保養所契約が実現。さらに一昨年からは大田区とも契約。交渉中の荒川区、武蔵野市との契約実現も見えている。
NGP津南と直接契約以外では、津南町や町観光協会と観光宿泊施設で契約する東京・昭島市、武蔵村山市、福生市などからの誘客も伸び、東京都内から郊外を経由する「直通シャトルバス」の運行が、契約地域とを結ぶホットラインとして誘客効果を上げている。
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国が年金福祉事業団の全国にある「グリーンピア」を売却、あるいは廃止する方針を打ち出したのは小泉政権下の平成14年。津南町は「町が買い取る」ことを視野に研究を開始。国との交渉の末、2億1400万円での譲渡を決める(平成27年まで返済)。同時に経営を任せる民間を全国公募。多数の照会があり、現地説明会には大手企業など17社が参加し、最終的には6社が申し込みした。
津南町は民間委託先を公募型プロポーザルで募った。「施設管理、経営、修繕、すべて受託者の責任で行う」、「経営は公共性を保ち、10年間は設置目的を守り、地元雇用を確保する」など行政主導の厳しい条件を付けた。結果、東京で福祉施設などを経営する「医療法人財団・光善会」を主体とするグループに決まった。光善会をメインとする現地法人「津南高原開発」を設立し、経営している。
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「目標は10万泊。今期はもう少しで9万泊。営業努力で着実に伸びている。津南町による賃借料の軽減はありがたく、その減額分を施設修繕に当てていきたい」。NGP津南は年間3千万円を上回る修繕が求められる。だが「順次、この修繕が行えれば、施設改善は確実にできる」という。
この施設修繕。急を要するのが埋設電気ケーブルの更新、開業以来使用するエレベーター整備、さらに敷地内道路の舗装など。建物は当時、総事業費250億円で建設したこともあり、プロポーザル時点の全面点検でも、東日本大震災後の耐震度やコンクリート強度検査でも、「異常は見られない。充分使用できる」と調査結果が出ている。
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契約満了まで2年だが、NGP津南は3、4年先を見越した営業に取り組む。特に年々入込が増えるスキー修学旅行は、学校側が3年先、4年先の確約を求める。「2年後の契約満了後の津南町の方針が不明確では営業できない」と先月、上村町長にNGP津南・松崎和秋社長ら幹部は直接交渉。町は『契約更新の方針』を伝えたが、議会との関係があり決定ではない。
民間委託では、賃借料の提示を求め、最高額が光善会の年額6千万円だった。町は3年後、風評被害での売上ダウンを支援するため3千万円に減額、さらに東日本大震災の影響で激減したため特別措置で1年間にかぎり今年3月まで賃借料をゼロにした。さらに新年度、契約変更し、賃借料を年額3百万円に改定する方針だ。町は「賃借料の軽減分を施設や設備修繕に当てることが条件」(石橋地域振興課長)と減額改定の狙いを話す。
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全国公募プロポーザルで委託先決定を担当した当時の町幹部、元副町長の瀧澤秀雄さんは20年余り前、存続を求める町民署名で1万人余が寄せられた、その町民の思いが忘れられない。「賃借料引き下げは、町の支援策の一つだろう。まだ広大なエリアが未活用のなか、それをどうするかという町からの事業提案があってもいいのでは。経営の継続は、町民誰もが望むことではないのか」。
営業努力で『体力』をつけることが、津南高原開発に求められることは、経営首脳陣は分かりきっていること。その体力をどうつけるか。契約満了まで2年と迫るなか、津南町は今年がポイントと見る。「営業努力は当然としても、契約更新を前提に、経営会社の体力をどうつけるかが、大きな検討材料になる」。
津南観光のシンボル、NGP津南。この地に大規模観光施設を誘致した先人たちの思いの点に、その活路の糸口が見えてくる。