伝統の小正月行事「どんど焼き」を体験プログラムに組んだ「スノーバスター2013」の今冬第1回を11日から13日行った。県外から7人が参加。十日町市池谷の「NPO十日町市地域おこし実行委員会」の事務局長、多田朋孔さん(34)は、燃える青竹が破裂する音を楽しみながら、住民らと餅をあぶり、お神酒を交わした。
3年前、総務省事業で十町市が募集の「地域おこし協力隊」に応募、採用され、池谷集落を含む飛渡地区(14集落、117戸、約6百人)の担当に就いた多田さん。生後まもない息子と妻、3人で移住。当時6世帯13人のいわゆる「限界集落」の池谷。住民は「ムラを絶やすことはできない。後を継ぐ若者はいないか」と市に地域おこし協力隊の配置を要望。多田さんは中越地震後、池谷などに支援活動する国際NGO「JEN」のメンバーだった。
支援活動時代から取り組む一つがスノーバスター、除排雪の援護活動。今年で7年目。毎回10人を上回る参加。今回の「どんど焼き」に次ぎ、今月25日〜27日は雪かき道場、来月8日〜11日は雪遊びなどを計画。毎回、住民との交流会で郷土料理や地酒を囲み、雪談義で盛り上がる。
地域おこし協力隊の活動は『地域に役立つすべての活動』と特に制約はない。高齢化する住民の心配の一つは、いつまで田が作れるか。多田さんは1年目に10eの田を借り、米作りに挑戦、翌年から40eに拡大。同時に池谷ブランド「山清水米」の直売、さらに池谷の自然環境や伝統文化、風土を活用した体験プログラムを打ち出し、年間通じたエコツーリズム活動を展開。地域への宿泊、農産物直売などで経済効果をはかっている。
来月5日、3年間の地域おこし協力隊の任期を終える。昨年2月、次男が誕生、家族4人の池谷暮らしが、いよいよ本格化する。昨年4月、同実行委員会をNPO化した。これも独立への布石の一つ。2013年度の事業計画を立て、NPO会員募集を昨夏から本格化、全国から反応が届く。
「協力隊の思いが、しっかり地域に伝えられるかどうか、これが行政の大きな役割だろう。集落・地域が求める協力隊の姿が明確なら、それに応える協力隊を送り込むことが出来るが、だた単に作業協力や援農支援だけでは、定住を含むその先が見えてこないだろう」。3年の経験から語る。
さらに協力隊全体のチーム活動の有効性を話す。「受け入れる行政は、協力隊を個人で見るのではなく、チーム活動として見ることで、幅広い分野の活動ができ、協力隊の孤立化も防げる」。
多田さんは長崎・津島市の例を上げる。業務内容の分野別の専門家を募集したところ応募が殺到。「国の事業を活用し、自治体が独自事業に仕上げる、これも一つの方法だろう」と話す。
昨年、農水省の「6次産業プランナー」認定資格を取得。これも独立への一歩だ。現在、池谷はその後の移住者を含め8戸21人となり、「限界集落」を脱している。
十日町市には今年度17人(男13、女4)が市内各所で活動。昨年11月に1人が3年間の任期を終え、地元の農業法人で働く。来月には多田さん、さらに4月2人、6月3人、7月2人が任期を迎える。新たな協力隊の受け入れと共に、定住のための仕事作りが、課題として並存する。
十日町市企画政策課・協働推進係の小林良久係長は新たな取り組みを始めた。今年度から受入れ希望地域の思いを、協力隊応募者を前にプレンゼンテーションし、協力隊員と思いが合うようにしている。「受入れ地域が、自分たちの地域を今後こうしたいという思いや将来像を、しっかり描く事が協力隊の活動をさらに充実するはず。行政が落下傘的に地域に入れてもミスマッチの場合もあり、受け入れ地域の思いがより重要になっている」。
一方で課題は3年間の任期後の受け皿。「受け入れた行政としての責任があり、どう定住に結びつけるかが課題。同時に従来の募集要素の中に、地域の経済の歯車を回すような活動などと、新たな活動要素を取り入れている」と、人材の絞込みにも取り組む方針だ。
写真・池谷での本格的な自立暮らしがいよいよ始まる多田さん(中央、13日、どんど焼きで)