集落の高台にある神社境内から鹿渡が一望できる。手前に棚田が広がり、家並みが連なる。遠方には魚沼の山なみ。先月アップしたウェブサイト「だいすき さんが」のトップページ風景。画面は同じ場所からの冬景色にオーバーラップする。
「体験に来た子どもたちにこの写真を見せると、信じられない表情する。それほど夏と冬にギャップがある。この驚きこそ、この地域の魅力」。ウェブサイトを作成する『三箇地区 都会と交流を進める会』の事務局長、恩田輝次さん(58)は話す。ソフトウェア会社勤務の技が役立つ。『越後つなんの自然空間ーだいすき さんが』(sanga-tsunan.com)には、地域の自然、三箇体験に訪れた子たちや学生の体験シーンをアルバム風に紹介。
先月17日から訪れた鎌倉小の子たちの体験記録も同サイトに載る。受け入れた山我勉さん(62)は退職後、昨年故郷に移住したばかり。「農業のことは知りません、存分に遊んでいいよ、野菜も好きだけ採って食べていいよ、と話したんです。本当に私は農業初心者ですから」。子たちは畑のスイカを採り、かぶりつき、トマト大好き女の子は籠いっぱいに採り、それを平らげた。土の中から続々と現れるサツマイモに喜び、さっそく蒸かし子どもたちに。『うまーい』と大歓声。
「こんな事で大喜びするんだね。それだけ、こういう体験が少ないんだね。この地域に子どもの声が響くこと自体、地域を元気にしてくれる。どんどん協力するよ」。来年の受け入れのために空地を耕し、サツマイモ畑を作るつもりだ。
この体験活動をなんとか継続し、雪国体験に結び付けたいと、子たちを引率した鎌倉小教諭の斎藤祐介さん(37)は考えている。
「この自然の魅力と共に地元の皆さんとの縁を大切にしたい。子どもたちの反応が次につながります。冬の計画もあります。私たちは三箇に来たいと思っていますが、今回の子どもたちの反応を学校や親がどう見るかです」。三箇を5学年研修の定番にしたい、と考えている。
さらに、津南地域の子たちとの交流も期待する。「お互いの刺激になるはずです」。まず、冬のプログラム実現をめざしている。
完成間近のウェブサイト「だいすき さんが」。三箇PRと共にもう一つ狙いがある。「農産物販売を少しずつ始めたい。自分が作ったものが、少しでも売れれば作る意欲が湧いてくる。お年寄りの楽しみにもなるはず」。恩田輝次さんは考える。さらに『三箇地区 都会と交流を進める会』代表の恩田稔さん(61)と共に、地域の将来を考える。
「この先、三箇を含め津南はさらに高齢化する。冬場の暮らしが大きな課題。特に除雪。我々がカバーしきれない部分が出てくる。この交流を生かしたい」。同サイトで『除雪応援隊』を呼びかける計画だ。
いま大学などではボランティアが単位取得に関係する傾向にあり、雪国体験と共に除雪ボラへの参加を誘う。「単なる除雪ボラではなく地元との交流を深め、冬に来たら今度は夏に、夏に来たら今度は冬にと、年間交流を作り出したい」。
恩田稔さんは考える。「我々は雪さえなければいい所だと言うが、実はこの雪こそ、この地域の個性ではないのか。確かに冬の暮らしは大変。その大変さを、少しでも支援してくれる人たちがいれば、それだけでここに暮らす人たちは、生きる気力が湧いてくるだろう。雪の魅力は、我々が考える以上に大きい。この魅力ある資源を、もっともっと活用したい」。
心の拠り所の小学校が閉校した三箇地区。その空き校舎を拠点にした活動が始まっている。「三箇の挑戦」はまだまだ続く。 (終)
写真・雪を活用し、交流を通じて雪国暮らしへの支援も呼びかける方針だ(昨年2月、雪遊びする鎌倉小の子たち)