昨年11月の改選で誕生した新生・津南町議会。「住民との直接対話を」と先月25日から1日まで町内20会場で行った「住民・議会懇談会」。住民の関心はいま一歩だった。最少は25日開いた貝坂公民館の2人、最多は1日の鹿渡新田集落センターでの21人。町中央部の大割野区民会館では8人だった。河田強一議長は「これまでの議会報告会より参加数が増えている。気軽に懇談できることで、今後さらに増えるだろう。いただいた意見や要望は議会活動に反映すると共に、町への要望事項にも入れたい。毎年開催する方針だ」と話している。
今回の住民・議会懇談会で各集落代表に通知した開催日程資料に、同懇談会の考え方、議会の臨む姿勢が明記されている。
『地方分権時代にあり、自己決定、自己責任、自己負担が求められるなか、議会が住民に信頼され、住民と協働の町づくりを実現するためには、町づくり政策決定過程への住民参加が極めて重要』。情報の共有、議会の説明責任、議員は一部地域や職域の代弁者ではない、など懇談会の必要性を述べている。
さらに、同懇談会開催の背景も指摘している。『4年に一度の選挙が済めば、その後はお任せ民主主義では、町政の進展は望めない。町民に役立つ議会づくりには、住民の声を聞き、住民と議会の距離を縮めること』としている。
この懇談会、住民はどう受けとめたのか。議員経験年数別に縦割りで決めた1班3人編成が4日間、20会場で午後7時から9時頃まで開いた。最多世帯数、最多人口の大割野区民会館3階ホールでの懇談会は初日の25日。議会からは草津進、滝澤茂光、桑原悠の3氏。
参加住民は8人。余りの少なさから開会を5分ほど遅らせたが、その後の参加者はなかった。3月の新年度議会での議案審議、決ったことなどを説明。同時に懸案事項の町立津南病院、統合計画が出ている町立小学校の今後、さらに災害復旧状況など、町政が直面する根幹事業、インターネット中継などを説明し、住民からの意見を受けた。
大割野会場では、少ない参加数だったがほぼ全員が意見を述べた。地元課題では県立津南中等校の通学歩道整備の必要、さらに小学生の通学道路の危険性なども指摘。一方で、町政の大きな課題である農業問題では「苗場山麓の有効活用のためにも畑を水田化するくらいの意気込みで、山麓開発地から収益が上がるような取り組みを議会でも真剣に考えてほしい」など、議会活動への期待か聞かれた。
大割野会場に参加した高橋修二さん(61)は、「この参加数は少ないのか、それとも8人も来たのか、だね。議会に魅力がないのか、住民に関心がないのか、きっと両方なんだろうね。ただ私は今夜来て良かった。こういう場はとても大切と思う。なんでも気軽に話せることで、議会と住民の距離が縮まるから」と参加数より懇談会の中味が大事を述べていた。
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一方、20会場で最多21人が参加した鹿渡新田会場には、連休で帰省中の同地出身者も参加。津南町が昨年から実施の「認証米」の売れ残りが問題視された
「なぜ売れないのか、議員の皆さん考えましたか。自己満足では売れない。営業努力が足りない、それが理由です」。住民の厳しいストレートな意見に、議員は言葉に詰まった。さらに津南の民間米業者が東京で高い高級米を販売している実態を話し、「議員の皆さん、その現場を見るべきですよ。単に認証しただけでは売れません。相応の売る努力が全く見えない」。
さらに住民からは、上村町長の町政方針第一に掲げる「町民所得の向上」を取り上げ、「具体的な政策には何があるのか。目標年次を決めた具体的な計画はあるのか」と、同政策に対し議会内でどう議論されているのかを指摘。この質問に対して議員からは、認証米事業や農業振興などを説明したにとどまり、明確な意見は聞かれなかった。
さらに議会審議では出なかった論点も出た。「町総合センターを1・3億円で改修すると計画だが、あの建物は相当古い。ならば、これから十日町市が中里に建設する総合体育館を津南町民も自由に使えるような、連携できる取り組みに予算を活用すべきだ。町総合センターは取り壊すべきだ」など具体論が出た。
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一方、議員は今回の住民懇談会をどう受けとめたのか。2期議員のひとりは話す。「今回の懇談会を通じて、津南町の現状を知ってほしいと財政状態などを分かりやすく話したが、『そんな暗い話しばかりではなく、明るい話はないのか』などと言われた。確かにそうだが、先ず町の状態を知ることが、次へのステップになる。住民との懇談で距離が縮まったと思うが、今度はテーマ設定もいいのでは」。ベテラン議員のひとりは「これまでも議会報告会は開いているが、なかなか参加者が増えない。開催時期の問題もあるが、住民がその時、何に関心があるか、ポイントを絞った懇談の方が関心も高まるのでは。さらに議員が個人意見を言えないということも課題の一つだ」と話している。
新生・津南町議会の意欲性を住民は認めている。インターネット中継もそのひとつ。議会という組織体での活動、さらに議員という個人活動、その境目の難しさが今回の懇談会に出ていた。その中途半端さを住民は鋭く感じていた。議会活動は、議員個々の活動の集大成。さらに一歩も二歩も踏み込んだ住民対話が求められる。
写真・先月25日開催の大割野会場の参加住民は8人だった