竜ヶ窪の水問題で20日、飲料水使用する地元の谷内、岡集落の住民らで作る「龍ヶ窪の水と環境を守る会」(内山緑代表)は、大手コンビニによる取水問題の中止、撤回求める要望書を提出した。関係者5人が上村町長と懇談し、「全国的な観光スポットとなり、神秘的なったずまい、美しい景観、環境に魅かれ、訪れる人が増えている。この環境を守ってこそ、観光的な価値が高まり、地域の魅力が増す」と、今回の取水計画の中止を求めた。
要望に対し、上村町長は「この自然を守り、後世に伝えなければと思っている私も、その1人だ。その守る方法で意見が分かれている」と話し、竜ヶ窪を守るという基本部分では共通認識であると話した。
さらに、今回の大手コンビニが竜ヶ窪の最優先に交渉している背景にも言及。「企業は1年余りをかけ、全国調査した結果、竜ヶ窪の水が一番いいという結果を出した。これは嬉しいこと。企業側から、この名水を守るために保全資金の提供を提示している」と、民間企業の環境への取り組み姿勢を述べた。
さらに、新潟県との関係にも及んだ。今回の大手コンビニの親会社、大手商社は、新潟県が産業振興提携する唯一の民間企業で、「泉田知事も、県としてバックアップすると話している」と、県も今回の大手企業の動向に関心を寄せていることを上村町長は明らかにした。
要望書を提出した内山代表は、「竜ヶ窪の環境を守る活動は、これまでも、これからも地域とって、津南町にとって必要なこと。竜ヶ窪に関わらず、津南地域の湧水全般に関する勉強会を開いてほしい」と、水資源の保全への町としての取り組み姿勢を求めた。
津南町の名水百選「竜ヶ窪」から取水し、ペットボトル飲料水販売を大手コンビニが計画している問題で町は、水道水源使用の直接地元の一つ、谷内集落の意向調査を行い、20日、その結果がまとまった。回収率約87・65%、142人が回答。反対50%、賛成と条件付賛成30%、分からない20%という結果になった。上村町長は「当初から地元にも話しているが、地元の意向が第一義であると考えている」と意向調査結果を受け止めている。今月29日開会の町議会3月議会でも、この水問題論議があるため、最終決定は議会後になる見込みだ。
町が実施した意向調査は、自民基本台帳登録の18歳以上の162人を対象に、区長が各戸配布し回収。結果集計は20日、地元民4人が立会いし町役場で実施。学生など不在者を含むため実質回収率は90%以上。回答のうち取水に反対50%(71人)、賛成11%(16人)、条件付賛成19%(27人)、分からない20%(28人)という結果になった。
年代別回答もある。31歳から40歳では賛成16%、条件付賛成42%、反対21%、分からない21%、41歳から60歳は賛成8%、条件付賛成31%、反対51%、分からない4%、さらに61歳以上は賛成10%、条件付賛成12%、反対58%、分からない20%と、若い年代層は賛成が多く、年齢が上がるにつれ、反対が多い。
調査では理由も聞いている。賛成理由で多いのは「使用料で集落の運営が助かる」、「農産物などの有利販売が期待できる」、「雇用の場が増える」などを多く、「津南をPRできる」、「今の谷内集落を変えたい」など。
一方、反対理由は「竜ヶ窪の環境に影響が出る」、「水量が減る」、「大企業だから工場を建ててからが心配」などが多く、「必ず自然に影響が出る」、「神聖な区域であり、たたりがある」、「金銭面でも雇用面でも見合うメリットがない」など。
上村町長は、この意向調査結果を谷内集落に、配布する意向だ。「谷内、岡の皆さんに、津南を救ってくれというのが、私の真意だ。今回の事は、津南にとって大きな試金石と思っている。これまでの『何かやってくれる』という意識から、自分たちで何かやっていくという津南町に変わっていける、そういう町になる試金石と思っている」と、意向調査結果を受けた20日、取材に話している。
来週28日、取水を希望する大手コンビニの担当常務が来町し、意向調査結果を説明を受け、上村町長と懇談することになっている。上村町長は、「議会でも取り上げられているので、結論は議会後になる」と見通しを話す。