藍(あい)色が濃から淡にグラデーションする積み木。ペア・クラーセン作の「セラ」。
組みようによってはツリーになったり、奥深いトンネルになったりと、世界が無限に広がる。直線が作る立方体が、曲線を感じさせたり、深浅を感じさせたり。『遊びの天才』、子どもたちにかかれば、それこそ宇宙に飛び出すかも。テーブルの上で、次々と組み替える津南町の江村かおる(48)。「面白いですよ。何度やっても飽きませんね」。『おもちゃ』と言うには、奥が深い積み木たち。「おもちゃです。おもちゃは、とても面白いものですよ」。
(敬称略)
△△△
新潟市の幼稚園時代、祖母が和裁する姿を見て育った。すーっと糸を通す、その不思議さをじーっと見ていた。父親の仕事関係で佐渡、長野市など転々。小学3年から高校卒業までの9年居た長野市が、津南に来るまでの最長。「津南で、その9年を超えたんです。未知の世界に入っているんですよ」。
津南暮らし13年目、最長記録を更新中。とはいえ、「もう動きませんよ。家もできましたから」。
ドアを開けると、絵本や木の積み木やおもちゃが、目に飛び込んでくる。『からころツリー』。ビー玉を木のてっぺんかた転がすと、音階の違うを音が出しながら転がり落ちる。絵本『All Colore(オール・カラー)』は、その色紙から、動物や鳥、くだものなど鮮やかな原色が飛び出す仕掛け絵本も。そこは、「絵本とおもちゃ」の館。一歩入ると、「かおるワールド」だ。
△△△
ものを創る。子どもたちが小さい頃。「手の込んだものではありませんが、いろいろ作りましたね。娘ふたりの頃、こいのぼりも作りました」。きれいな布を求め、子たちが好きな色のうろこを、一枚一枚を縫いつけ玄関に飾りました。娘たちと楽しみましたね」。ビニールをかぶって、洋服のように遊ぶ娘を見て、さっと着られるピンクのドレスを作ったら、「それはもう、嬉しそうに遊びましたね。お姫さまごっこです」。その娘たち。長女はバックパッカーで6ヶ月かけ世界一周、次女はワーキングホリデーでカナダにいる。
なぜ、手作りなのか。「自分で作ったものは、どうやって作ったのか分かりますですから、直しも簡単にでき、作り直しがすぐにできます。手作りは、エコですね」。
△△△
女性17人でつくる「おはなしおかあさん」のメンバー。絵本や手作り人形を持って、小学校や保育園、福祉施設などへ出向き、読み聞かせなどを行う。「面白い本、面白い本と求めていったら、こんなになりました」。本棚にぎっしり、1000冊はあるという。
「子どもは絵本が好きですよ。大人が読んでも面白い絵本も多く、年齢を重ねて分かるのが絵本、本当に面白いです」。落合恵子の「クレヨンハウス」にもよく行ったが、最近はネットを活用。「便利になりました。でも困っちゃいますね。ネットは次々と面白そうな本を紹介してくれます。区切りをつけるのが大変です」。
△△△
3月12日、長野新潟県境地震。その5日後から、被災地栄村の避難所へ絵本や手芸品を持参しボラ活動。いまも仮設住宅へ行っている。子どもたちに絵本を読み聞かせ、時には手品も。お年寄りと一緒に手芸品「ふくろう」作りなどもする。
「皆さんの笑顔で、こちらが元気をいただいています。読み聞かせを聞く子どもたちの笑顔が忘れられませんね」。
△△△
子どもたちの言葉に、ハッとさせられた。絵本に外国のことが出てきた。「外国へ行きたいねー、と言ったんですよ。そしたら…、『行けばいいじゃない』とさらりと言うんです。あー、そうだなと、納得しちゃいましたね。言葉なんですね」。
人間は、知っている言葉で動く、という。ならば、「きれいな言葉をいっぱい入れ、いっぱい楽しむのがいいですね。それには絵本ですよ。単純で洗練された絵と言葉、本当に面白です」。
夢がある。「小さな声で言いますが、お店をやってみたいんです。おもちゃと絵本のお店。楽しそうですよね」。
写真 原色の木のおもちゃと絵本千冊がある「江村かおるワールド」