東京電力が清津川から取水し、湯沢発電所で発電後、別水系の魚野川に放流している発電分水問題で、十日町市と南魚沼市の水争い的な対立を解決するため泉田知事の仲介で三者協定を結び、清津川に流すべき最低流量を話し合う県設置の「清津川魚野川流域水環境検討協議会」を31日、南魚沼市のホテルで開き、秋の観光シーズンには従来の1・82倍から2・93倍を流す「暫定維持流量」で合意した。同協議会は5年間を見込み、協議により維持流量増を行う方針で、十日町市では「魚野川の正常流量が決まればさらに増量も可能」としている。同市では南魚沼市との水問題を早急に解決し、『本丸』である東京電力と放流量交渉に入りたい方針だ。
今回合意したのは、南魚沼地域の農業かんがい用水期と非かんがい期、さらに清津峡の秋の紅葉シーズンに対応した増量。年平均で毎秒0・142d増量、年平均0・716d(従前0・574d)の暫定維持流量。最大の増量は清津峡の紅葉シーズンの10月16日から11月15日の約1ヵ月間。従来の1・8倍から2・9倍増。夏の渇水期7、8月も毎秒0・176d増。だが、地元清津峡など旧中里地域が求める流量とは、ほど遠い合意内容だ。
地元の清津川流域問題懇話会メンバーで清津川を守る会の藤ノ木信子事務局長は「これは通過点でしかない。市長判断は、私たちは認めざるを得ない。問題にならない量であり、改善にはほど遠い内容。冬の川の閉塞が問題であるが、清津川の場合、川が閉塞してもいいということを認めたのが今回の暫定合意であり、これで下流域の住民の生命財産が守られるものでないことは明白だ」と疑問を述べている。
一方、知事の仲介で交渉を進めた関口市長は「しっかり話し合い、結果が出たことを喜んでいる。今後、魚野川の正常流量が確定していき、今回の暫定流量の魚野川への影響が分かっていき、再度協議することになるだろう」と見通し。さらに 「魚野川の水は魚野川で確保しろという泉田知事の大英断があり、県と南魚沼市でしっかり協議を」と県の主導性を期待。南魚沼市の井口市長は「懸案の大筋ができ、暫定だが一区切りがつき喜んでいる。水争い的にはもうならないし、してはならない」と話している。今夏には魚野川の正常流量が示される方針で、今回合意の維持流量の増量も期待される。
十日町市では「南魚沼との百年におよぶ水問題。これを早急に決着し、抜本的な問題である東京電力との本格交渉に入りたい」と、湯沢発電所のあり方そのものを問う本格論議に早急に臨みたい方針だ。
写真・十日町・関口市長(左)と南魚沼・井口市長が合意後、記者の質問に答える(31日、六日町で)