十日町・津南の760`平方という広大な自然のフィールドで3年に一度開く越後妻有アートトリエンナーレ・大地の芸術祭は今月26日開幕する。2000年の第1回からの作品含め370作品が里山の集落や市街地、山奥のムラなどに点在し、「日本の原風景と現代アートが出会い」を作り上げる。開幕まで1週間余り、参加作家は住民との協働で作品を仕上げている。
芸術祭期間中、作品案内など同祭のサポートする「こべび隊」ガイドの事前研修ツアーが15日、東京や地元から40人余が参加し、総合ディレクター・北川フラム氏の案内で製作中の作品めぐりを行った。大部分が女性でこの日は社会人が多く、各作品の設置場所では製作中の作家から聞き取りを行い、デジタルカメラで記録するなど情報収集していた。
開幕中のガイド全体を統括する小澤志麻さん(48、横浜在住、国際ガイド)は「アート作品だけなら他に色々あるが、この懐深い里山の自然はそうない。そこに人が暮らし、作家との協働で作品を作り上げている。単なる野外アート展ではない大きなエネルギーを感じる」と魅力の一端を話している。ガイドは国内外の来場者に対応するため多国籍な通訳が求められ、さらに人材を求めている。
研修では製作中の作家との交流を行い、松代・会沢地区で『内なる旅』を製作するアンチィエ・グルメスさん(イタリア生まれ、新潟市在住)は「地元の人たちから私の方がエネルギーをもらっています。この作品で自分のうちなる目を感じてください」と話す。ブナ林の中に無数の眼と光る葉、地面には鏡など、独特の世界を創り上げている。
4回目を迎える同芸術祭。北川氏は「構想から10年が過ぎ、時代が明らかに変わってきた。都市環境が人間を画一化、平均化してきて、都市では人間一人ひとりの顔で動けなくなってきているという閉塞感があり、第二のふるさとを地域に探し出してきているという大きな流れが出てきている。国県が進めた合併政策だったが、地域の人たちにとってのリアリティーは集落であり、最初から集落にこだわり続けてやってきた。それだけに作品数は増え、前人未到の数になっている」と話す。里山の自然と共に暮らす集落の人たちと現代アートの融合による『人間回帰』が、ここ越後妻有で始まっている。
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開会式は26日、十日町キナーレで行い、40の国と地域から作家など350組、5百人余が出席。総合プロデューサー・福武總一郎氏や泉田知事も出席。空家プロジェクトでは松之山・浦田でオーストラリア大使館と日豪交流基金の全面協力で「オーストラリア・ハウス」が誕生し、恒常的な交流拠点となる。さらに津南町のマウンテンパーク津南・上野地区には「北東アジア文化村」が出現し、第1回の蔡國強氏のドラゴン美術館などを主体に今回、中国、韓国、台湾の作家が作品展開し、芸術祭後の交流や若手の登竜門となるアートグランプリなどの継続活動を視野に入れている。
大地の芸術祭の日程、作家動向などはホームページ、あるいは十日町市観光交流課(757‐2637)、津南町地域振興課(765‐3115)へ。