「異例中の異例。前例にはしない」と、2日開会の津南町議会3月定例会に、町が提案した株式会社津南醸造への公金貸付を盛り込んだ今年度補正予算案は、2日間に渡り本会議や全議員協議会で審議、JA津南町幹部からの説明などを受け、裁決の結果、原案通り公金貸付を可決した。総額765万3千円の貸付保証人には「小林三喜男」「瀧澤秀雄」の町長、副町長が個人名でつき、同社の経営責任と返済責任を明確にした。
津南町(5千万円出資、比率18・14%)やJA津南町(7千5百万円出資、同27・21%)、酒米生産農業者など315人が共同出資し、酒造権を獲得し、町内反里口に約10億円で新工場を建設し、津南産酒米・五百万石を使用して酒造りに取り組む「株式会社津南醸造」。13年前の創業時から建設資金など多額の借入金を背負いスタート。業界の落ち込みと連動するように業績が落ち、借入金返済に困窮しているのが現状。
今後の経営方針や返済計画、売上計画などが次々と出され、5日の本会議で「公金貸付部分を除いた修正補正予算」の提案もあったが、賛成少数で退けられ、裁決の結果、「11対4」で町提案の原案通り可決した。可決した津南醸造への公金貸付は、今年度補正390万3千円、新年度375万円の合計765万3千円。これは同社の借入金、地域総合整備財団(旧ふるさと財団)と北越銀行からの残金。今年8月返済で完納。借入金はJA津南町からの1億5千万円だけとなる。
なぜ、公金を貸し付けるのか。本会議での論点となった。「一般の民間の方がもっと厳しい。町内企業が同様に支援要請したら、公金貸付するのか」、「公金貸付ではなく、個人を含む他の方法があるはず」など議員から指摘が相次いだ。津南醸造(以前は小松原醸造)の設立、創業時から関わる瀧澤秀雄副町長は説明する。「町の支援体制を示し、町としての支援メッセージを明確にすることが大切」。さらに、地元酒米の付加価値化で酒造りを実現した元町長・村山正司氏を師と仰ぐ小林町長は、責任論を明言している。「百姓による百姓の酒。町民の手による町民の酒でスタートした。提案者としての責任は重い。経営の建て直しの必要があり、運営形態のあり方も研究が必要。町として町長として深い責任を感じている」。
津南醸造の先行きは見えていない。5日朝提出された経営計画では今後、年3百万円の売り上げアップを行い、瀧澤副町長が説明する採算ラインの売上7千万円をめざすという。JA津南町・瀧澤組合長は厳しい。「農協はこれ以上の追加融資はできない。その時点にならないと営業成績はも分からないが、懸命に営業担当が努力し、商談も進みつつある」など、民間経営の難しさを話す。町もこれ以上の資金支援は難しく、一般利用できる町単独「つなぎ資金制度」を充実し、復活させる方針だ。
今後の同社経営、経営母体について小林町長は4日の本会議で微妙な発言をしている。「経営については、別のあり方での選択が必要になるだろう。いろいろな方々と議論している。もうしばらくすると、明らかにできる。私の任期中に、すっきりした決着をつけたい。農協と共に存在させながら酒ブランドを広めていき、経営継続したい」などと、経営体制の刷新などを示唆している。