公設民営による中核病院化への改築問題が関心を呼ぶ県立十日町病院(塚田芳久院長・ベット数275床)。8日、津南町で講演した塚田院長は、同病院運営の方向性に言及し、改築問題に一石を投じた。『365日24時間救急受入診療体制、県内2番目のドクターカー導入、災害支援出動のDMAT認定病院など、十日町病院が継続診療できる体制の存続には、スタッフの継続が最重要条件。これを危うくする「民営なら厚生連」の結論は馴染めない』。同病院改築にあたり、現場の最高責任者が公の場で経営母体について明言したのは初めて。
十日町市が県要望している「民営は厚生連」に、真っ向から異議を唱えている。さらに経営母体について「検討会のフレーム案では、運営主体の中で独立法人化に触れていないが…」など、独立法人化への取り組みへの関心を示唆している。医療現場トップの病院運営方針が明らかになり、十日町病院改築論議は新たな要素が加わり、今後の論議に大きな影響を与えるものと見られる。
8日夜の講演会。テーマは『地域医療の充実をめざして』。塚田十日町病院長が「自治体病院と地域医療の充実」、石川眞一郎津南病院長は「津南病院がめざす医療」について病院経営を通じて得たデータなどをもとに講演。会場の津南町役場3階大会議室は地元や十日町、南魚沼、栄村などから150人余の参加し、関心の高さを示した。
十日町病院の改築問題は、建設地と共に運営母体が焦点。県病院局と十日町市が今春から現在地で改築の可能性を探り、高層建築で駐車場確保により改築が可能の意向を受け、田口市長が先月「現在地での改築を」とする方針を出している。一方、『公設民営』の経営母体は、十日町市と市議会連名で今年6月、「厚生連を第一候補に」と県に要望書を提出している。
だが、8日の塚田十日町病院長の発言は、その方針に疑問を呈する形になっている。県立15病院の累積赤字429億円のなか、黒字経営の十日町病院の現状を説明し、医療体制の維持に何が必要か明言している。『開設以来59年累積欠損なし、県から年間3億円繰入、1億3千万円の黒字。剰余金3億円余、臨床研修医病院で初マッチングで研修医決定、時間外診療1万人、救急車搬入年間1800台』。
塚田院長は、この医療体制を継続できるシステム存続の必要を強調。そのためには「スタッフの継続が最重要条件。これを危うくする「民営なら厚生連」の結論は馴染めない」と疑問を呈している。「十日町病院は現在のスタッフが継続して診療出来れば、健全経営が可能で、2、3年後には繰入せずに黒字化が果たせる。医者は自由な医療をやりたいと思っているので、厚生連的な締め付ける医療は臨んでいない」と厚生連による民営化を危惧している。
運営主体について「丸投げのPFI(指定管理者制度)は全国に40も50もあり、その移行に問題がある所も多い。独立法人化という形体もあるが、今回のフレーム案に入るのかどうか、全く論議されていない。過疎地における公設民営化はスタッフ確保、組合対策が重要になる」と新病院の経営主体について述べている。