
収穫の秋を迎えたが、住民の表情はあきらめ顔だ。新潟と長野県境、信濃川(千曲川)に流れ込む志久見川沿いの津南町上郷地区、栄村東部地区で、サルの農作物被害が広がっている。「20頭、30頭の群れで来るので、喰い散らかしの被害は大きい。追い払っても、人間の隙をみて来る。知恵比べになっている」。被害を受ける津南町住民は話す。今月末から来月にかけて、栄村は被害が多い東部地区で、村猟友会と地元住民が協力し、大々的な『追い出し作戦』を展開する。これに津南町も連携し、サル一掃をはかる方針だ。
群れ集団で農作物を食い荒らすサル被害は、5、6年前から目立ち始めている。農業被害は、これまではクマ被害が規模や被害額とも多かったが、サルは、市場作物と共に住民の家庭菜園的な農作物被害が多い。
津南町朴木沢の島田昭一さん(81)は、サルの知恵に困惑している。「今年は自分で作ったスイカを全く食べられなかった。ジャガイモは種イモを喰われ、サツマイモはつるごと引っこ抜かれた。1bほどのネット柵を作っても全然効き目なし。爆竹にも慣れ、大声にもすぐ慣れる。サルは手が利くからなんでもできる。これからは大根だ。茎の下の一番甘い所を食べる。これではどうしようもない」。
栄村は今年4月から、サル捕獲に報奨金を出している。1頭2万円(県補助2千5百円)。イノシシは1頭1万円。9月末までに15頭を捕獲。さらに同村では、電気柵設置にも独自補助(上限1万5千円)。捕獲は村猟友会(滝沢三四吉会長)が行うが、志久見川沿いは集落が連なり、銃を使った捕獲ができないのが現状。
担当の村産業建設課・斎藤保産業振興係長は、困惑ぎみだ。「決め手を欠くのが現状。今年に入り、村西部の野田沢、大久保地区でもサル被害が出始め被害が広がっている。なぜ急にサルが増えたのか不明だが、今秋、東部地区で大規模な追い込みを実施する」。今月28日、村猟友会総会で実施日程などを決める。降雪前に『ここは恐い所だぞと、サルに印象づけたい』(斎藤係長)。追い出し作戦の効果が期待される。
一方、津南町はサルやイノシシ捕獲への報奨金はない。サル被害よりクマ被害の方が被害額も多く、サル被害対策は、今のところ具体的な取り組みはない。だが栄村との連携は事務レベルで連絡し合い、今月末から来月上旬に実施予定の栄村の『追い出し』と連携し、共同実施したい方針だ。
町の税務町民課の町民班・石田剛士主事は「なかなか決め手がない。他市町村の対策などを参考にしているが、とにかく、あらゆる手段でこの地域をエサ場にしないこと。その努力が必要」と話す。津南町猟友会(中沢順一会長)も今月末理事会を開き、今後の対応などを協議する方針だ。
「サル知恵」に翻弄される人間社会。組織で動くサル集団には、偵察する『先遣隊』がいると言われる。動物にとってこれからは、冬に向かっての食糧確保のシーズンに入る。人間対サルの知恵比べは、まだまだ続きそうだ。