自律の歩みを選択した津南町。その町の行方をリードするトップリーダーを選ぶ町長選は、来月20日告示、25日投票だ。国や県の厳しい財政事情は、容赦なく市町村に押し寄せ、地方自治体の運営は、さらに厳しきを増している。限られた財源をどう使うか、「センスある行政運営」が求められている。今度の町長選、争点は何か。
ようやく畑の雪が消えた津南町沖ノ原台地。近くの林は、まだ分厚い残雪に覆われている。戸祭博文さん(48)は、今月20日頃から始まるアスパラ出荷のための畑作業に忙しい。「農業で自立しようと津南に移住してきたが、10年余りが経って、まだまだだが、ようやく見えてきたような気がする」。アスパラ1f、雪下にんじん65eを耕作。4年前に求めた町内赤沢の我が家から毎日、沖ノ原に通っている。
昭和の大合併で1955年(昭和30年)誕生した新生・津南町。人口2万1909人でスタート。51年後の今年5月1日現在、1万1830人。合併時に比べ46%余も減少している。5月現在の65歳以上の高齢化率「34・23%」。6年前の27・96%から、1年で1ポイントづつアップしている。かなりの高齢化スピードだ。昨年1年間の出生届は76件、死亡は165件となっている。
茨城から1995年(平成7年)、家族4人で移住してきた戸祭さん。津南町が全国募集した「津南で農業しませんか」の新規就農者に応募。前職はNTT社員。3年間の研修を受け独立。当初は町などの指導でにんじん栽培に取り組むが、収益性などからアスパラ栽培に移行。現在1fを妻・清美さん(41)と夫婦で営む。移住当時、保育園児の長男は中学3年、新入学の長女は高校3年、時の流れを感じている。「来年2人は、進路選択を迫られます。いろいろ考えているようです」。アスパラ出荷が本格化するのは今月20日頃から。「朝夕の収穫、2、3時間あれば2人で終わる。始めた頃は大変だったが、ようやく分かるようになった」。
津南町は平成6年から新規就農者受入れを開始。これまでに26人が取り組み、19人が営農活動を続けている。2年前から県補助がなくなり、研修費は月額5万円に減額。「農業法人などで働き、賃金を受けながら研修している」(町地域振興課)。スタートから担当している石橋雅博班長。「この事業で20人近い人が津南に定住している。多いと見るか、少ないと見るか、意見は分かれるだろうが、農業で生きる人たちが増えている現実は、やはり相応の効果が上がっていると言えるのでは」。すでに4人が結婚し、1人は姓が変わった。自宅を新築している。
「新規就農の受け入れもいいと思うが、地元の若い人たちの育成にもっと力を入れてはどうだろう。最近地元後継者が増えている。そのためにもここで暮らす定住環境、たとえば教育や医療など、充実することが必要では」と話す。