医療現場や飲食部門など、消毒が必要とされる場所で簡易に消毒できる技術特許を持つエンジニアが今春3月末、民間を退職し、津南町に帰ってきた。町内岡の内山満さん(60)は、東洋熱工業在職中の2002年、そのシステムなどの特許を米国で取得。日本でも特許出願している。このシステムは多分野で応用が可能で、津南町は内山氏の「知的財産」に注目し、同システムを使った製品化への支援を行う方針で、6月定例会に補正予算を提案する。内山さんは、「これからはアグリカルチャー(農)の時代。このシステムは多分野で活用できる。津南でできた製品が、世界に発信されることになる」と話し、事業実現への協力姿勢を示している。
このシステムは、「湿り空気(モイスチャー=湿気、水分)」を使う。一般的にボイラー加熱して水分を含んだ空気を「蒸気(スチーム)」というが、モイスチャーは高温加熱しないで作る湿り空気。この湿り空気・モイスチャーを60度〜80度前後の活用で殺菌、滅菌ができ、さらに150度以上で活用すると医療機器などの消毒に使用できる。このシステムを研究し、アメリカで2002年特許取得している。
この応用は幅広い。殺菌、滅菌分野では、すでに内山さんの指導で商品化している手指消毒装置「モイスチャークリーン」、携帯タイプの消毒機、すでに実用している病院の食事運搬具ワゴンの消毒に導入。今後の研究では種子消毒、果樹や野菜消毒なども可能。さらに電磁波なしの調理器、スチームサウナや足温器、美顔器などの健康器具、さらにすでに実証済みの生ゴミ処理。同システムを使うと生ゴミの炭化が容易だ。
〓 〓 〓
「誰もやっていなかった分野。私がこれにぶつかり、私が拾っただけのもの。簡単な原理なだけに、データ収集と研究が必要だが、応用は多用な分野で使える可能性がある。あわてないでいいと思うが、10年間でひとつのメドはつけたい」。すでに商品化されている手指消毒装置「モイスチャークリーン」は、大きな可能性を秘めた製品。取り扱い会社・メデイィカル・クリーン・プロダクツは、内山さんの研究仲間。「金型ができ、量産化できれば4分の1、10万円前後で販売できる。薬品も使わず、設置、使用が簡単で、人に優しい装置。この応用で携帯タイプの消毒器具もできる。使い捨てライター程度の簡易さでできる」など、用途の可能性は広い。
特に、「これからはアグリカルチャー(農業)の時代。果樹や野菜の消毒も、今後の研究でこのシステムが使えるだろう。人に無害、使用も簡易、今後の研究で農業分野の活用もきたいできる」と話す。内山さんは、「ライセンス(特許)の活用を津南で役立てたい。設備投資は不要で、組み立て施設があれば充分。これからは工業所有権をどう持つか、知的財産をどう活用するか、そうゆう時代になっている」と話す。
このシステムの活用は、世界が注目し、各分野でも研究中で、環境問題に関心が集まる中、薬剤を使わない殺菌、滅菌分野への活用は、ビッグビジネスにも通じている。
・・・・・・・・・・・
内山さんは町内岡、内山謙二さんのいとこで横須賀生まれ。早稲田大理工学部機械工学科卒。東洋熱工業でクリーンルーム(無菌室)研究に取り組み、「無菌室」研究の第一人者となり、内山さん研究開発の無菌室が、全国の無菌室シェアの8割を占めている。この研究技術により昭和47年発掘の高松塚古墳保存への協力要請が文化庁からあり、空調関係で協力。無菌室研究から、「遠赤外線と水による殺菌の応用例」で1998年にはアメリカ・アリゾナで学会発表。同年に「常圧過熱蒸気」で特許出願、2002年アメリカで特許取得。2003年の日本エアロゾル学会で初めて「湿り空気研究会」を立ち上げ、湿り空気(モイスチャー)が一般に出て、一躍注目を集め、関係機関からその取り組みに関心が集まっている。39歳の時、くも膜下出血を4回発作し、奇跡的に生還したが、左半身不随の後遺症が残っている。今年3月、東洋熱工業を退職。4月から岡で暮らしている。