10・23新潟中越地震で、市町村職員は休日、深夜関係なく住民への安全策、避難所確保、危険箇所点検などに奔走した。その行政職員の休日出勤や超過勤務手当の対応で、市町村間で違いが出ている。発生の23日からすべて手当対象にし、すでに支給している自治体、超過勤務時間を代休対応している自治体、あるいは職員から超過勤務請求が全くない自治体など、自治体対応に大きな違いが出た今回の震災。
負傷者3人、家屋被害20棟の栄村は、今回の地震に伴う職員の超過勤務手当請求はいっさいなく、「職員の自主的なもの」としている。
同村では地震発生の23日、全職員が出動し、村内全域の被害状況や住民の避難、危険箇所の点検などを行い、翌24日も全職員が休日出勤している。さらに以降も深夜までの勤務や村内状況の調査、安全確認など、勤務時間外での職務を続けていた。
同村災害対策本部の桑原富平総務課長は、「本来であれば、職員は命令により動き、職務にあたる。今回の地震では、職員自身が自主的に動き、村民のために働いた。これまでに超過勤務、休日出勤請求をあげてきた職員はいない。職員全員、今回の地震ではよく動いてくれた」と話している。超過勤務手当、休日出勤手当を職員が請求しなかった同村。自律むら・栄村、その自律意識がここにも表れている。
松之山町は、地震発生の23日から10日間余り、職員が勤務した超過勤務、休日出勤の両手当ともに、規定どおり全額支給している。
今回の地震では、地震発生の23日から、ほぼ全職員60人余りが出動し、そのすべてが超過勤務、休日出勤対応となり、先月支給ですでに支給している。総額は管理職の特別勤務手当を含めると約190万円となる。20日からの12月議会で専決処分提案する。
津南町は、地震発生の23日を除き、翌日24日から先月30日までを対象に、超過勤務はすべて代休対応としている。
津南もほぼ全職員が対象となり、地震発生時の23日は緊急時ということで支給対象外として、翌24日から先月30日までが対象。超過勤務、休日出勤を時間換算し、それを代休対応することにした。先月26日の課長会議で決め、各課を通じて全職員に通知した。
超過勤務の総時間は1647時間となり、手当換算すると約370万円となる。これを8時間勤務換算で代休扱いとして、端数は時間休扱いとする。大平健太郎総務課長は、「住民感情からいって、町職員だけが手当支給を受けることは、理解を得られないと考え、代休対応とした。その代休を取るか取らないかは、各職員が自身で判断すること」としている。なお、津南町では、地震発生の23日から同月28日までは当直8人体制、29日から11月1日までは4人、以降2人体制を取り、防災緊急対応に当たってきた。
田口直人川西町長は、中越地震に伴う町職員の時間外勤務手当を支給しない事を決め、先月29日に決裁。これに対し同町職員労働組合(丸山執行委員長、組合員110人)は「組合と協議を持つ事が先決で、一方的に決めるのは納得できない」と3日、田口町長に不支給の根拠を示すよう申入れを行った。職員労組では田口町長の返答を待って、対応を決める方針だ。
時間外手当の不支給は、「公務員は被災しても職を失わない。被災住民やボランティア活動に配慮した結果」として方針を決めたもの。しかし、職員労組と協議する前に決裁したことから問題が表面化した。
田口町長は「労基法に抵触するかもしれないが、非常事態ということを配慮してもらいたい。労組と協議前に表面化してことは申し訳ない」としているが「協議をしてもこの方針に変わりはない」と意向を示している。
丸山委員長は「私らが悪者になっており遺憾。すべては協議してからだ」と話している。
なお、平日の時間外手当などについて十日町市や中里村などでは「基本的には労基法に添って対応する」としているものの、十日町市では「休日出勤については今後、振替代休で対応する」(企画人事課)とする一方、中里村では「労基法が基本だが住民感情を配慮する必要があり、労組と協議を続けていく」(山本村長)としている。