違法取水で水利権が取り消され、JR東日本の信濃川発電所が完全ストップしているなか、同社の水利権取得の再申請に関心が集まる。十日町市議会「信濃川・清津川対策特別委員会」を21日開き、出席を求められたJR東・信濃川発電所業務改善部の執行役員・中井雅彦部長は、初めて水利権取得後の宮中ダム下流への維持流量にふれた。中井部長はこの中で、国の諮問機関・信濃川中流域水環境改善検討協議会が示した「維持流量毎秒40d以上」を基本に、「40dを基本に、夏場の渇水期、サケ遡上期には毎秒60d」を年間通じて変動放流し、それを実験的に5年間行い、その後に放流量を見直していく方針を示した。
同特別委委員会が事前にJR東に求めていた「信濃川のあり方、望ましい河川環境」についての質問に対し、中井部長が答えた。
「これから信濃川のあり方を考える検討委員会が設けられていくことは承知している。現時点での私どもの考え方であるが、年間通して最低40d(毎秒)以上を確保したい。これを固定するつもりはない。真夏やサケ遡上期には60d余りが必要と思う。この流量40d、60dという川の姿がどういう姿なのか検証をしたい。サケ回帰は3年から5年といわれ、その効果と共に5年間の検証期間を設け、魚道改善と共に検証したい」と現時点と前置きしながらも、維持流量に対する基本的な考え方を、水利権取り消し後、初めて明らかにした。
この40dについては「10年間かけて信濃川中流域水環境改善検討協議会が議論を重ねたもの。魚類、藻類、川の形態など研究し、学術的ではあるが最低40d以上としている。これは机上の数字であり、実際に流さないとわからない部分があり、5年間の検証を行いたい」と話している。
この5年間の検証は、水利権取得にも関係する。国が定めた再申請期限(来年3月9日)までに最大取水量を申請する。同時にJR東は宮中ダム下流に維持流量40d以上を年間に渡って放流し、夏の渇水期とサケ遡上期には60dを増量放流し、これを5年間続け、サケ回帰や河川環境の変化などを調査・検証するというもの。この検証が水利権取水量に影響すると見られる。JR東・業務改善推進部十日町事務所では「5年間の検証後、最大取水量にも影響するかもしれない」と、水利権取得後、5年間の検証により見直しがあることを示唆している。
水利権取り消し後、JR東から初めて維持流量への考え方が示された点について、漁業権を持つ中魚沼漁協・長谷川克一組合長は「現時点での叩き台と思うが、40や60の数字では話し合い以前のこと。5年間の検証では100d以上まで様々な検証をしてほしい」と、突然出たJR東側の数字提示に困惑と苛立ちを示している。