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2009年05月の妻有に生きる


過去の妻有に生きる
桑原善一さん 県展入選 68歳 津南町所平
「中学生の時、母が買ってくれたカメラを手に、よく写真を撮っていた。間もなくカメラのことは頭から離れたが、写真好きの農業仲間に誘われたのがきっかけで、60歳を過ぎてから再びカメラを手にしたよ」…2月の寒い時期。隣りの家を見ると、屋根から軒先まで4bもの長さのツララができていた。思わずカメラを取り出し、シャッターを切った。全倍にプリントしたその写真が今年の県展で入選した。
 

 「以前は、写真を撮るなら景色のいい所へ出かけないと撮れないと思っていたけど、プロ写真家などとの交流で、地元にも目を向けるようになってきた。それがよかったんだろうな」
 …6年前に町内の写真愛好者が集う『フォト津南』が誕生。結成当時からのメンバーだ。「月1回の例会と、2ヵ月に1回は作品5〜10点を作ってプロ写真家の添削を受けている。『なるほど、こう撮ればいいのか』とか『周りのカットが大事だな』などと、なかなか勉強になるね」…3年前の十日町市展では、奨励賞も受けた。雪解けの田んぼを背景に、手押し車を押す3人のおばあちゃんが、列をつくるように歩いている光景。これも地元で撮った写真。
 「よく考えてみれば、ツララも、雪解けの風景も、ここに住んでいるから撮れたもの。プロの先生がよく『足元をよく見て』と言うけど、なるほどと思う」
 

 …これまではリバーサルフィルムを使った撮影がほとんど。今、デジタル一眼のカメラを買うための貯金も始めた。「時々、貯金を崩すから、なかなか貯まらないよ。ところで家には95歳と94歳の父母が元気だから、カメラを向けようかな」
(2009.05.29)

小野塚夏代さん 39歳 津南学校給食センター調理員
「春から山林火災が多く、やはり気になりますね。活動はこれからですが、火災防止のため、しっかり広報していきたいです」
 …新年度に発足した津南町の女性消防団。団員10人のうちひとり。部長と団員を結ぶ班長を務める。「仲のいい友だちの夫が消防団の幹部に就いていて、『お前が入れよ』と女性消防団の申込み用紙を持ってきたんです。情けないような話ですが、それが入団するきっかけになったんです」


  …体力には自信がある。というのも、「よさこい津南」発足当時からのメンバーでもあるからだ。
 「スポーツが得意だったということはないんですが、健康づくりのつもりもあってよさこいに入ったんですが、これがすごい運動で、いい汗をかきますね。昨年と今年、韓国にも行ってきました。こうした体験で得たことを防火にも生かしていけたらと思っています」…活動は、主に防火チラシの配布や広報など。
 「活動はまだこれからですが、あの制服を着ると気持ちがしゃきっとしますね。仲間もみんなサバサバしていていい人ばかり。初めて集まったという感じがしないんです。初代なので、よい雰囲気づくりに努めていきたいです」
 

 …子どもは高校3年の長男、小学6年の次男、同4年の長女の3人。「家族のことを考えると火災の怖さを改めて感じます。毎日のように火事による悲惨なニュースが流れていますが、まず自分たちが住んでいるところから、そうしたことがないようにしていきたいです」…女性団員は今後も増やしていく計画。「津南全域、きめ細かに配置できたらいいですね」
(2009.05.24)

涌井光孝さん 池田鉄工所 56歳
…十日町地域では唯一の、鉄骨製作では上位グレードとなるMグレードを取得の池田鉄工所。勤務35年余りになる。
 「高校を卒業してすぐに当時の日本鋼管津造船所に勤めたんだ。大会社だから半年間は会社が持つ技術学校に入り、溶接など学んだんだ。2年ほどでUターンすることになったため、会社から『何のために勉強させてやったと思っているんだ』と、イヤミを言われました」
 

 …現場が長かったが、今は工場長として設計図に向き合う毎日。
 「建造関係でもとび職に任せるようなことはなく、すべて自社の従業員で対応するので、安全面には気を使う。朝礼では、口すっぱく言っているつもりだ」
 …日常からの言動により、大きな事故もなく、今年の建設産業安全大会で職長賞の表彰を受けた。
 「まさか会場で、代表として壇に上がるとは思っていなかった。式典が始まる時になって、社長から『お前が代表してもらうことになっている』と聞かされ、唖然としたよ」


  …春先、毎年のように関東方面からの下請け仕事として受注があったが、不景気の影響を受け、仕事量は減っている。
 「鉄鋼関係の仕事というのは、景気がよくないとだめな職種。早く景気をよくしてもらいたい。それにあの『姉歯事件』以来、検査は一層厳しくなり、全うに行ってきた業者にまでとばっちりを食った感じだ」 …鉄骨製作管理Mグレードは取得10年目。的確に行われているかの審査もある。
 「本当に厳しい。検査基準や外注管理など、ファイルが5、6冊にもなる。それをきちんとクリアーして始めて継続できるんだ。鉄も硬いし、安全面や製作管理面も堅いよ」
(2009.05.15)

小林博憲さん 32歳 津南町割野
「自由な雰囲気で楽しく音楽活動をしていく、それが一番。全国各地で年間60から百回くらいライブ演奏しているよ」
 …ラテンロッカーズ「コパ・サルーヴォ」のパーカッション担当でリーダー。メンバーは現在7人。昨年の津南雪まつりでも演奏を披露した。
 

 「バンドの出発は、9年前に東京の服飾専門学校時代の仲間とボサノバをやりはじめたのが始まり。ラテンロックになったのは、成り行きだな」
 …キューバで有名な伝統のエグレム・スタジオでレコーディングをしたこともある。
 「キューバは人柄がよかった。基本は『おごってくれ』だけど、『金がない』と言うと『じゃあ俺がおごってやる』だった。いい演奏もできたし、経費はレコーディング会社が出してくれたし、最高だった」


  …メインは音楽だが、生活のため、普段は川崎の飲食店で働いている。妻と3人の子どもは津南。いわゆる単身赴任だ。
 「自由な活動をと、音楽専門で生活していく気はない。ただ今年、バンドも仕事も安定させ、2、3年後には津南から演奏活動に出られるようにしたい」
 …子どもは4歳、2歳と誕生間もない女の子だけ3人。かわいい盛りだ。
 「妻子を残しての仕事とバンド活動で、いつまでもこのままというわけにはいかない。津南で農作業もやっていきたいしね」
 

 …4年前の苗場フジロック、昨年の韓国釜山ロックフェス、などビッグフェスティバルへの参加も増えている。
 「今年は管楽器を増やし、15、16人編成くらいにしたいと思っている。それに来年は6枚目のCDも予定している。応援よろしく」
(2009.05.08)

内山キクさん 81歳 津南町芦ヶ崎
「エンピツ一本と紙切れ1枚あればできますからねえ。足腰は弱くなっても、自分の楽しみとして続けていられます」
 …友だちに誘われ、20年ほど前に当時の町農協婦人部・短歌会に顔を出したのが短歌との出会い。以後、短歌会『砂丘』の同人にも名を連ねている。
 

 「指導に当たって下さっています萩原(光之)先生は、よく『言葉ひとつでイメージが変わる』とおっしゃいます。厳しい言葉ですね。私なんて、ただ単に身の周りのことをうたにしているだけのことだと思っているんです」…雪解けに水量増えし信濃川鮭黒ぐろと上る日のあれ―。評では、鮭が『黒ぐろ』と」迫ってくる勢いがある。水利に係わる課題がクリアーされれば、流れ豊かな往時の信濃川に回帰も。『日のあれ』は作者のひたぶりな祈りの表白で深く心に沁みる、とある。
 

 「今回は確かに一歩踏み込んでつくりましたが、丁度、水問題が話題になった時期でもありましたから、テーマに合っていたのではないでしょうか。本当にたまたまです」…黄桜の丘桜まつりでの短歌応募は、今年で10年目。昨年の観光協会賞に次ぐ入賞だ。
 「萩原先生は、よく旅行しなさいと言われるんです。広くものが見えるからと。歳が歳だから周りに迷惑をかけてしまうので、団体旅行というわけには行きません。家族が連れて行ってくれる範囲で出かけるようにしています」
…『砂丘』では、2ヵ月に10首提出するのがきまり。
 「今はもうできませんが、私はずっと農業。作物も花も、芽をつける時に感動を覚えます。そんなことをうたにしていきたいなあと思っているんです」
(2009.05.01)


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