「小さな小屋みたいな店を開いたばかりの時、十日町で商売をしているというお客さんから『とにかく10年頑張らっしゃい。10年すれば商売も分ってくるし、お客さんの顔も見えてくるから』と言われたんです。まだほとんどお客もいないような時。その言葉が胸に染みました」。きもの産業が低迷期にさしかかり、それまで内職していた出で機ばたなどの仕事がな くなった時、見玉不動尊からの勧めもあって始めたのが土産物屋だった。「始めたばかりの頃は、お客さんも来なく、周りの人が忙しそうに田植えなどしていると、恥ずかしくて店の陰に隠れていたこともありました」
それから23年余。たまたま姉の近所に嫁いだこともあり、隣りには姉が同じみやげの店を開店している。「姉妹だから気兼ねしなくていいし、時々、一緒に温泉に行ったりしています」。お客さんは、バブル期が弾けてから年々減少傾向だが、迎える気持ちは開店当初から変わらない。
「中年が多いせいでしょうか。お茶を差し上げると、本当に喜んでくれます。ひとりしかいないので、忙しい時に孫の世話をしていたら、子守をしてくれたお客さんもいたということもありました」
店には、夫が好きで集めた民具も展示。お客さんの目を楽しませている。「懐かしい時代がここにあります。都会から来た人が驚いたり懐かしがったり。お客さんの笑顔が励みになります。『津南に行ってよかった』と言われるよう、気持ちよく対応していきたいです」。春の新緑から季節は夏へ。苗場登山などのシーズンを迎える。「雄大な自然、来て下さい」